特集 FEATURE

更新日:2023.08.18

「ふれあい」から始まるSDGs

長岡市環境部環境政策課では、長岡市の豊かな自然を守り育てていくために「長岡市環境基本計画」を策定しました。
その基本方針の一つである「協働で良好な環境を未来につなぐ人づくり」の一環として、市民活動団体と協働で、SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)を学ぶ自然体験活動を実施しています。
今月号では、環境政策課・里村誠さん、そして同課と協働で体験活動を実施している、特定非営利活動法人 越の里山倶楽部(以下、越の里山俱楽部)・河合佳代子さんと、てらどまり若者会議~波音~(以下、波音)・木村勝一さんにお話を聞きました。

「知識」ではなく「体験」を

ー環境政策課さんは、越の里山俱楽部さんとは「田んぼの生き物観察会」を、波音さんとは「ビーチコーミング」を開催してきました。こうした自然体験活動を実施するに至った経緯を教えてください。

里村さん(以下、里村):きっかけは、長岡市環境審議会の委員の方から「子どもたちが外で遊び、自然にふれる機会をつくってほしい」というご意見をいただいたことでした。自然にふれてもらうことで、自分が自然の中で生きているということを実感してもらえるのではないかと思い、企画を作り始めました。

ー子どもたちが自然にふれる機会が減っているというのは、河合さんも木村さんも思うところがあるのではないでしょうか。

河合さん(以下、河合):そうですね。日頃子どもたちと接していて、言葉や知識として知っていても、本物を知らない子どもが多いと感じています。例えば、実際に鳥を見て「こんなに小さいの!?」と驚いていたり…日頃テレビで見ていると大きく見えるんですよね。

木村さん(以下、木村):僕も、同じことを感じています。子どもたちは、魚に関する知識はありますが、よく寺泊で釣りをしている僕のように、この海のどの辺りに、どんな魚がどれぐらいいるのかということはわかりません。自分で体感することが大切だと思います。

「田んぼの生き物観察会」で、採取した生き物を観察している様子。普段違う学校に通う子どもたちの間に、コミュニケーションが生まれていました。

参加者の反応から得た、確かな手応え

「学び」と「楽しい」の両立

ー体験活動では、どのような工夫をされましたか。

木村:「ゴミ拾い=辛い」というイメージがあるので、そこで拾ったものを使って工作してもらうことで「楽しい思い出」として子どもたちの中に残るようなプログラムにしました。その方が結果的に、「楽しい海を守りたい」と思ってもらえるのではないかと思ったんです。

河合:田んぼに住んでいるカエルが、生物多様性やSDGsについて説明する手紙を事前に参加者に送り、「SDGs」という言葉を知っている状態で来てもらえるようにしたことです。私たちの活動は、SDGsの中でも特に生物多様性がテーマだったので、限られた時間の中で、子どもたちに生き物にふれてもらいながら、SDGsについて学んでもらえるように工夫しました。

伝わった、自然の「楽しさ」と「大切さ」

ー当日の参加者の方の様子は、いかがでしたか。

木村:意図していたよりも、こちらのメッセージが伝わったように感じました。浜辺のゴミ拾いをすることで、身近なゴミ問題を自分ごととして捉えてくれていたと思います。

里村:自分たちで小さなプラスチックゴミを拾うことで、「これを鳥や魚が食べたら大変」と想像してくれたと思いました。参加者の方の様子を見て、参加した子どもたちの意識の変化が周りに伝播していくイメージが浮かびましたね。

河合知識が実体験と結びついて生まれる感動があったと思います。それは、子どもたちだけではなく、大人も同じ。大人の方が感じた楽しさが、子どもたちに伝わったのではないでしょうか。自然の楽しさをこちらが教え込まなくても、伝わっていたと感じています。

木村:親子で一緒に同じことを体感したことによって、共有財産が生まれたのかもしれませんね。

ービーチコーミングでは、予想外の出来事もあったそうですね。

木村:海岸に着いたら、大量のイワシが打ち上げられていたんです!これは、1年間に数日あるかないかの出来事。思いがけないことが起きる自然の驚きを、感じてもらえたと思います。

「ビーチコーミング」で、ゴミ拾い後に海岸の漂流物を使って工作。思い思いの材料を使い、カラフルで個性的な作品ができあがりました。

協働したからこそ、できたこと

ー今回の体験活動は、行政と市民活動団体の協働で実施されました。

里村:行政では、ここまで地域密着で専門性の高い事業を実施するのは難しいです。市民活動団体の方と協働したからこそ、私たちにはなかったアイデアをかたちにすることができました

木村:僕たちにとっては、行政から広報していただくことで、団体の認知度が上がるのでありがたいです。

河合:行政の方が広報してくださることで、これまで里山フィールドに来たことのない方が足を運んでくださいました。また体験からSDGsを学んでもらうプログラムを考えるいい機会をいただいたと思っています。団体の将来につながっていきそうです。

長岡市のSDGsのこれから

ーこれからも長岡市でSDGsについて取り組んでいくにあたり、大切だと思うことを教えてください。

河合:今、生活できているからいいという訳ではなく、30年後の子どもたちに何を残せるかを考えることが大切だと思います。学校でもSDGsについて教えていますが、色々な主体があの手この手で伝えていくことで、SDGsに取り組むキーパーソンが増えていくのではないでしょうか。

木村:僕たちのプログラムで言えば、「ゴミを拾うこと=ゴール」ではありません。街でポイ捨てされたゴミは、川を通って寺泊の海へ流れていきます。そして、海に流れ着いたゴミを全て拾うのは難しい。だからこそ、自分たちの行動の先を考えて、生活を変えていくことが大切だと思います。

里村:長岡市がもつ自然の豊かさや、そこに住む生物や植物の多様性を知ってもらう機会をつくり続けていくことが大切だと思っています。その大切さを知る人たちが増えて、地産地消を心がけたり、環境にやさしい製品を使ったりと、身近な行動につながっていくと、うれしいですね。

 
 環境を守っていく意識を育むためには、知識だけではなく実際に自然にふれる機会をつくっていくことが大切だとわかりました。それは、環境分野に限らず、SDGsの他の目標についても同じことなのかもしれません。実際に体験してみることではじめて、SDGsで取り扱われている課題が自分ごとになるのではないでしょうか。