雪だるまづくりや雪合戦、そり遊びと、子どもの頃は雪が降るのが待ち遠しかったものです。しかし大人になり、雪遊びから遠ざかった途端、毎年雪が降るのが憂鬱になったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に家や道路の除雪は一苦労。お年寄りや妊娠中の方、身体の不自由な方にとっては、なおさらです。今月号では、お互いに助け合いながら、冬の除雪を乗り切っている事例をご紹介します。
みんなで助け合って除雪する
除雪での助け合いと聞いてまず最初に思い浮かぶのは、町内やグループで一緒に行う除雪ではないでしょうか。2022~23年度、長岡市地域振興戦略部では、共助組織等が除雪に使用する小型除雪機や安全用具の購入補助制度を実施しました。来迎寺中央町内会や関根町内会が、制度を活用して必要な用具を購入し、町内で除雪作業を行っています。また大積地区では「大積雪ほり隊」を結成し、40名ほどの隊員で毎年20件程度の屋根の雪下ろしをしているそう。
一方、住民の人数が少ない地域の場合、住んでいる人たちだけで作業をするのは難しいこともありますよね。そこで、長岡市では地域外の人から協力を得る有償ボランティア支援の拡充を行っています。例えば、特定非営利活動法人 中越防災フロンティアが主宰する「YUBO(有償ブースターの略)」では、除雪を手伝ってほしい人と手伝ってくれる人「ブースター」をLINEでつなぐシステムを運用。参加者は、LINEで届く募集メッセージを見て応募し、地域内の雪下ろしチームと一緒に除雪作業を行います。謝金を支払ったり、土日しか参加できない方も参加しやすいシステムにしたりすることで、除雪作業のマンパワー不足を継続的に補っています。
できる人にお願いする
除雪する範囲が広い場合や、地域の高齢化率が高く作業をできる人数が少ない場合には、みんなで助け合ったとしても除雪が難しいことも。そうした場合には、除雪機を持っている人にお願いするというのも一つの方法かもしれません。越路の飯塚区では、農産物直売所を経営している「清造農園」の田中豊さんと息子の将也さんが、除雪車の通らない市道などの除雪をしています。始まりは、約18年前の直売所の移転をきっかけに、豊さんが直売所を訪れるお客さんのために駐車場を除雪する際に、近くの市道の除雪もしていたこと。当初、作業に係る費用は清造農園が負担していましたが、現在は地域住民からの提案もあり、飯塚区が行政に補助金を申請して負担しているそう。「父は、駐車場を除雪する『ついで』に、市道の除雪を行っていました。私も同じ気持ちです」と将也さんは話します。燃料費を区費から出すことで、除雪する側の経済的負担とお願いする側の心理的不安を減らし、より持続可能な取り組みになりますね。
やり方を伝える
高齢者の方や身体の不自由な方と同じように、妊娠している方も自力での除雪に難しさを感じています。年齢問わず雪国に住む全ての人が、生涯に渡ってすこやかに暮らし続けられるように講座や教室を開催している市民団体「カラダLab.」は、年齢や出産経験の有無に関わらず、全国の男女135名にアンケートを実施。すると長岡市在住の回答者113名のうち65.7%の方が、妊娠中または産褥期の除雪により、流産や出血、精神的苦痛などのトラブルがあったと回答しました。そこでカラダLab.では、2023年11月に「除雪作業のミカタ」と題し、除雪の際に負担のかからない身体の使い方や作業後のアフターケアについて学べる講座を開催。講座では、参加者に妊婦ジャケットを着用してもらい、妊娠している方の身体の負担を体験できるようにしたそうです。
当日は、保健師や助産師、長岡への転入者など様々な方が参加。実施後のアンケートでは、「雪国で初めての冬を迎える。雪国ではじめての妊娠出産を迎えるかもしれない。色々不安があるけど、たくさんのことを聞けて参考になった」、「妊娠中に泣きながら除雪をしていたことを思いだした。誰も気づかなかったことに新しい切り口で取り組んでいて良い」、「妊婦ジャケットを長時間着用し、座っているだけでも想像以上に大変だった。これで除雪作業となると厳しい。町内や学校PTAの場でも、どうしたら良いのか検討していきたい」という声が聞かれました。共働きや核家族化により、どうしても自分で除雪しなければいけない場面に遭遇することが避けられない中で、とても心強い活動ですね。
「雪」というと「除雪が大変」「通勤や移動に時間がかかる」など、どうしてもマイナスなイメージがつきまとうもの。しかし雪が降るからこそ、除雪作業を通してつながりが生まれ、時代の変化に合わせていかに安全かつ持続可能な方法で作業するかを考えることで、アイデアが生まれます。地域にある物事のプラス面を見るのかマイナス面を見るのか。課題を見つけようと思えば、いくらでも見つかってしまうからこそ、課題を解決する努力と同じくらいプラスを見る努力も大切なのではないでしょうか。