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更新日:2024.02.27

~新潟県中越大震災から20年~ 今ここから大切にしたいこと

 最大震度7を記録した「令和6年能登半島地震」から始まった2024年。おめでたいはずのお正月を襲った衝撃的な出来事は、多くの方に大きなショックと不安を与えました。実は、2024年は最大震度7を記録した「新潟県中越大震災(以下、中越地震)」から20年の節目の年でもあります。2014年の「復興」からの10年間は、どのような意味をもつ時間だったのでしょうか。また震災を経験した私たちは、何を大切にしながら未来をつくっていけばよいのでしょうか。公益社団法人 中越防災安全推進機構(以下、機構)・諸橋 和行さんと、竹田元気づくり会議・砂川 祐次郎さんにお話を伺いました。


中越地震との関わり


ーまずは、中越地震とどのように関わったのか教えていただけますか。

諸橋 和行さん(以下、諸橋):その頃、私は平日東京で働き、土日は長岡に戻って来るという生活をしていました。地震の起きた10月23日は土曜日だったため、長岡で被災。それまで防災との関わりはなかったのですが、大学の先輩から「雪の研究を活かして、自分たちにできることをしよう」と誘われ、現地調査や提言書の作成に参加しました。長岡に戻って来た2010年から機構で働くようになり、地域の防災活動に関わっています。

砂川 祐次郎さん(以下、砂川):私は1998年に埼玉県から移住し、地震が起きた頃はガソリンスタンドで働いていました。被災後は、ガソリンスタンドに給油に来る人の対応をしたり、炊き出しを取りに行ったり。震災前も、塞の神や消防団などに参加はしていたのですが、今のように深く地域づくりに関わるようになったのは震災後からです。集落の総代や「竹田元気づくり会議」の代表になり、地域の復興に関わりました。

活動の分岐点となった10年


ー中越地震から10年後の2014年が「復興」だとしたら、その後の10年は、どのような意味をもつものだったと思いますか。

砂川:震災から始まった活動の一つの分岐点だったのではないかと思います。活動を続ける団体もいれば、力が抜けてやめる団体もいて。地域のキーマンが不在になって、続かなくなる活動もありましたね。

諸橋:地域復興支援員や中越メモリアル回廊に係るそれ以外の復興基金が廃止された影響もあるかもしれません。基金を資金源にしていた活動は続かなかったのではないでしょうか。機構としても、復興基金が出なくなった後の経営について考える10年でした。人件費を行政からの補助金に頼ってしまうと活動に制限が出てきてしまうので、スタッフの自主性や活動の自由度を担保できるような体制を整えてきました。

砂川:「予算があるから」ではなく、地域の人がやりたくてやっている活動は続いたのかもしれません。竹田元気づくり会議でも、メンバーそれぞれがやりたいことを自由にできる環境を大切にしています。

諸橋:メンバーの自主性や活動の自由度があるかどうかが、活動や団体の存続に影響したのかもしれませんね。

中越地震を振り返る「新潟県中越大震災20年プロジェクト」のキックオフミーティングの様子。震源地だった川口と中継をつなぎ、砂川さんもパネリストとして参加した。

今ここから大切にしたいこと

目指すは、暮らす人の「ニヤニヤ」


ー10年後、長岡がどのようなまちになっているといいと思いますか。

砂川:暮らしている人が思わず「ニヤニヤ」してしまうような場所になっているといいと思います。私が住んでいる竹田集落では、外でご近所の人に会うと、みんなニヤニヤしているんです。「ニヤニヤ」は、何か面白いことが起きるんじゃないかというワクワク感の現れ。日々が楽しいことが大切だと思っています。

諸橋:「ニヤニヤ」はいいキーワードですね。それなら、私は防災が専門なので、「ニヤニヤの機会が増える防災」に取り組んでいきたいと思っていました。いきなり「避難訓練のために集まろう」と言っても、楽しくない。でも「バーベキューのために集まろう」と言えば、みんなニヤニヤしながら集まれるし、災害時に経験として活きてきます。

砂川:長岡市総ニヤニヤ計画ですね!

砂川さんが集落の人のために書いているフリーペーパー「ぼちぼちたけだ」。「何のためにやっているのかと聞かれたこともありますが、何になるかわからないから、面白い」と砂川さん。

大切なのは「面白がるチカラ」と「想定外」


ー今お話いただいたようなまちにするために、大切なのはどのようなことでしょうか。

砂川:「面白がるチカラ」だと思います。地域の過疎化や高齢化が課題だと言われますが、それらは状況でしかないんです。一般的に課題と言われることや失敗も、どうやったら面白がれるか。色々なことを面白がって、みんながニヤニヤしてる方が楽しそうに見えて、自然と人が寄ってくるのではないでしょうか。

諸橋:「想定外」がキーワードだと思います。防災も想定通りにやろうとすると、言われたことや決めたことを、ただやるだけになってしまいます。でも誰かに任せてみると、想定外の動きをする。それで、失敗することもありますが、その過程の中で自主性が育まれます。その自主性がコミュニティを強くし、結果的に防災力が上がります。

 災害は、いつだって想定外。そう考えると、活動の中で「想定外」を受け入れられる地域は「想定外」に強い地域と言えるのかもしれません。最初から目的地を決めてそこに固執するのではなく、面白いことを積み重ねて行った先にある未来にワクワクすること。今私たちが「課題」と呼んでいるものの中には、肩に入れていた力を抜いて、違う角度から見て面白がってみたら解決するものもあるのかもしれません。

 

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