2020.06.19

先輩から受け取った栃尾ワインの夢のバトンを次世代へつなぐ|大竹正幸さん【インタビュー】

市民活動に取り組む団体は、状況を整理して舵取りをする人、実行部隊として目的を着実に遂行するのが得意な人、ピンチの時にはスポット的に手を貸してくれる存在も現れたりと、色々な人が関わって成り立っています。それぞれの人たちが、自分の生活の中で活動に充てられる時間や能力を提供し、様々な形で関わっています。では、実際にどんな人がどのように活動に関わっているのでしょうか。活動を支えている「あの人」を訪ね、活動の実際のところをアレコレ伺ってきました。

 

今回ご紹介するのは、“山、川、海と自然を愛する遊び人”大竹正幸さんです!

 


大竹正幸さん
自営業/栃尾のワインを楽しむ会 元代表、とちお農園株式会社 元代表
1940年、群馬県前橋市生まれ。取締役社長として家業の有限会社大竹洋品店を営んでいる。「栃尾のワインを楽しむ会」では会員向けのワイン試飲会を開催。


 

先輩から受け取った栃尾ワインの夢のバトンを次世代へつなぐ|大竹正幸さん

 

栃尾の繊維産業が衰退していく中、2000年頃に、退職後の人たちを中心に「新しい特産品を作りたい!」と耕作放棄地を使ったワイン用ブドウの生産が始まりました。しかし、ボランティア運営だったこともあり、開始3年で資金難に。そこで『栃尾のワインを楽しむ会』を立ち上げ、資金確保のため1口 1万円で3年間、毎年新酒2本が届く会員制度を作りました。その際に会計と事務局として白羽の矢が立ったのが、「頼まれたら断れない性格なんです」と微笑む大竹正幸さんでした。

その後、会の代表も務め、収穫体験や新酒の試飲パーティを開催するなど会員拡大を図ってきました。「大変な思いもしましたが、会員さんの中には栃尾地域外の方も多くいらっしゃり、栃尾のファンを増やすことにやりがいがあります」。また、ワイン用ブドウの生産強化にも着手。2013年には地域の農家を巻き込んで、とちお農園株式会社を設立しました。


▲栃尾の大倉地域では、開始当初は県内でも珍しかったドイツ原産のブドウであるケルナー種を栽培しています。

それでも事業継続のためには、さらなる販路拡大と事業の収益化(コミュニティ・ビジネス化)が課題です。その中で心強かったのが息子・幸輔さんのUターンでした。デザイナーの幸輔さんは2016年にとちお農園株式会社の事業を引き継ぐとワインラベルのデザインのリニューアルを担当。2017年には販売拠点の『栃尾ワインの店 葡萄の杜』をオープン。宣伝広告に力を入れ2018年には製造したワイン3,000本全てを初めて売り切ることができました。

「自分では考えつかなかったアイディアを若い世代だったら思いつく。自分でわからないことは、そのまま残して若い世代に任せようと思っています」という大竹さん。栃尾ワインの収益化への道のりはまだ途中。長年思い描いていた生産から醸造までを地域内で手掛けるワイナリーの建設に向けて、次の世代にバトンが引き継がれていきます。

 


本記事は、らこって2020年6月号でご紹介しています。