2020.09.29

支援が必要な子どもたちが「ただいま」と言える場所を|田中琴恵さん【インタビュー】

市民活動に取り組む団体は、状況を整理して舵取りをする人、実行部隊として目的を着実に遂行するのが得意な人、ピンチの時にはスポット的に手を貸してくれる存在も現れたりと、色々な人が関わって成り立っています。それぞれの人たちが、自分の生活の中で活動に充てられる時間や能力を提供し、様々な形で関わっています。では、実際にどんな人がどのように活動に関わっているのでしょうか。活動を支えている「あの人」を訪ね、活動の実際のところをアレコレ伺ってきました。

 

今回ご紹介するのは、“「生きづらさ」を抱えた人たちの応援団長”田中琴恵さんです!

 


田中琴恵さん
特定非営利活動法人 ピュアはーと
1966年福井県生まれ。物事をとことん追求したくなる性格で、自閉症をもつ娘を理解するため、再度大学に入学し、特別支援教育士、社会福祉士の資格を取得。


 

支援が必要な子どもたちが「ただいま」と言える場所を|田中琴恵さん

 

障がい等の「生きづらさ」を抱えた人たちが、体験活動を通して社会性を学び、地域の中で暮らせるように活動している特定非営利活動法人ピュアはーと。設立者の田中琴恵さんは、団体の立上げから10年間活動の中核を担っています。

活動を始めたきっかけは、娘・翠恵(みえ)さんが自閉症の診断を受け、学区外の少人数制の学校に通うようになったこと。そこで田中さんは、娘が住んでいる地域の人と関わる機会がないことに気づきました。「このままでは、地域の人は誰も娘のことを知らず、『この子、誰?』という状況になってしまうと思いました」。

そこで、支援が必要な子どもたちと地域のつながりをつくろうと、2010年に「特別な支援が必要な子どもを持つ親の会」を設立。活動拠点は、住んでいる町内につくりました。「拠点をあえて住宅地に選んだのは、みんなで子どもたちを守り育てていくような地域であってほしいと思ったから。ただ、反対意見もありましたので、一つ一つ真摯に対応しました」。その誠実な姿勢と活動が実を結び、少しずつ理解者が増えていきました。「毎年していた餅つきでは、徐々に来てくれる人が増え、町内会長さんたちとのつながりもできました。『あったかい地域になったなぁ』と思いました」。


▲地域の方と協力して、「ピュアはーと」と「ピュアぴーす」に設置したイルミネーション。2020年9月30日まで夜間点灯した。

そして、2012年にNPO法人化し、13年に地域活動支援センター、15年に放課後等デイサービス「ピュアはーと」、20年に「ピュアぴーす」を開所。活動を続ける中で、地域との絆も深まってきました。「今年は、地域の方と障がいのある方が一体となって、イルミネーションを設置しました。OBや親御さんたちも集まってくれて、『みんなでやってよかった』と思いました」。

目指すのは、障がいの有無に関わらず子どもたちと地域の人たちが、「ただいま」「おかえりなさい」と言い合える場所。子どもたちが、親亡き後も安心して暮らせる温かい地域をつくるため活動していきます。

 


本記事は、らこって2020年9月号でご紹介しています。