2022.06.14

【特集】マップづくりで つながりづくり | 明日の郷土を語る会、ヨイタタンサケイカク

マップづくりで つながりづくり

 行ったことのない場所に行くときや、特定の場所を巡るときに欠かせないマップ。生活の中では、経路の確認のために使われることが多いですが、地域活動においては、地域の魅力を掘り起こし可視化するツールでもあります。今回は、地域のマップを作った2つの団体に地域マップの活用術についてお話を聞きました。

明日の郷土を語る会~1枚で何度もおいしい!マップづくり~

宮本地区の地域活性化を目的として活動している明日の郷土を語る会は、2020年に「大好き宮本『ふるさと再発見マップ』越後長岡みやもと遊散歩」を作成しました。きっかけは、新型コロナウイルス感染症の流行により地域の行事が中止になり、世代間の交流の機会が少なくなったこと。そして宮本地区には越後長岡丘陵公園や雪国植物園などの観光スポットがあるにも関わらず、地域外に発信するツールがなかったことでした。

明日の郷土を語る会が作成した「大好き宮本『ふるさと再発見マップ』越後長岡みやもと遊散歩」。それぞれのエリアで見られる生き物のイラスト入り。

地域の子どもたちと作る

 マップの作成を通して地域の子どもたちと大人が接する機会をつくろうと、宮本小学校の子どもたちに協力を依頼。子どもたちがマップに掲載する場所を訪れ、地域の大人たちから話を聞き、イラストと紹介文を作成しました。子どもたちに参加してもらったことで、「孫の描いた絵がマップに載り、家庭内の会話が増えた」といううれしい声もあったそうです。

マップを使った企画を開催

 2021年には、マップを片手に地域を歩いて撮った写真を募集する「大好き宮本フォトコンテスト」を開催。地域内外から多数応募のあった全作品を「コミセン作品展」に展示し、一般来場者の投票で入賞作品を決定しました。一般投票にしたことで地域の方から興味をもってもらうことができ、作品を見て「宮本にこんなところがあったとは知らなかった」と言う人や、投票結果について家族と盛り上がった人もいたそう。今後は、フォトコンテストの入賞作品12点を使ったカレンダー作成や、マップを使ったウォーキングイベント開催を考えているんだとか。作成から活用までの過程の中で、1枚のマップを地域活性化に効果的に活かしている事例と言えるのではないでしょうか。

宮本小学校の子どもたちが、地域でアーティストとして活動している田中翠恵さんに教えてもらいながらイラストを作成している様子。

ヨイタタンサケイカク~“ソト”の目線で地域を編集~

 長岡造形大学北研究室の学生と与板の有志「YOIMAP」で構成されている「ヨイタタンサケイカク」。これまでに、与板のまちに潜むあやしいモノたちをまとめた「よいたあやしいまっぷ」や、与板のあちらこちらにある「消」と書かれた謎の看板についてまとめた「よいたきえるかんばんマップBOOK」など、一度聞いたら忘れられないユニークなマップ4点を作成してきました。

“とがった”マップを作りたい

 マップ作成に至ったきっかけは、YOIMAP代表・田中洋介さんが「まちの賑わいは、まちを歩いている人の数。与板のまちを歩いている人を増やすために、“とがった”マップを作りたい」と思い、長岡造形大学の北雄介助教に話を持ちかけたこと。当時北研究室に所属していた学生や呼び掛けに反応した造形大学の学生たちが、実際に与板のまちを歩いたり地域の人に話を聞いたりしながら、それぞれの感性に触れたものを集めてコンセプトを決め、マップを作ってきました。中には、マップを作るまで与板に来たことのなかった学生もいたそう。参加した卒業生の伊藤崇宙さんは「新しいものと古いものが共存している面白いまちだと思った。自分で歩いてみたことで“まちの顔”が見えた気がした」と言います。

イベント「キャンドルナイト@与板」でのまち歩きの様子。与板小学校の授業でも、マップを活用しまち歩きを行いました。

学生の視点を活かすために

 一緒にマップを作成した田中さんは、与板に住んでいない学生が加わることによって「そんな視点があるかと驚かされるような発見があった」と言い、その斬新な視点を活かすためあえて作成中は地域内の方からフィードバックをもらうことは控えたそうです。また学生のマップ作成を見守ってきた北助教は「まちを客観的に見ることはできません。様々な視点や価値観をもった人たちで複数のマップを作ることによって与板のまちを多角的に浮かび上がらせることができるのでは」と言います。
 今後は、マップにとらわれず様々な方法で与板の魅力を表現していきたいそう。“ソト”の目線を上手に活かし、地域内の人では気づけない地域の良さをユニークな手法で編集して届けているプロジェクトです。

 マップの作成過程で地域の小学生を巻き込んだ明日の郷土を語る会と、地域外の大学生を巻き込んだヨイタタンサケイカク。地域マップは、多様な人と一緒に作ることで、人とのつながりをつくる機会になるということがわかりました。地域に長く住んでいると地域の魅力に慣れてしまいますが、マップづくりはまちを見る人や魅せ方を変えることで地域に新しい発見をもたらす手段なのかもしれません。

明日の郷土を語る会

1985年設立。宮本地区の地域活性化のため、花見や芸能大会、村祭りなどのイベントの主催・後援。感染症流行後、まち歩きマップを作成。
<マップの配布場所>アオーレ長岡、宮本コミュニティセンター、国営越後丘陵公園、雪国植物園など

ヨイタタンサケイカク

2019年設立。長岡造形大学北研究室の学生と与板有志で構成されており、名所と名所の間を含めたまちの雰囲気が伝わるマップを作っている。
<マップの配布・販売場所>ウェブサイトをご覧ください。


本記事は、らこって2022年7月号でご紹介しています。