2022.08.19

【特集】学校と地域 持続可能な関係性とは | 十日町地区雪まつり、~目指せ!あの旧黒川をもう一度~河川清掃活動

学校と地域 持続可能な関係性とは

 2004年に導入された、学校と地域住民が協力して学校の運営に関わる「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」。学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことで「地域とともにある学校」への転換が図れると期待されています。今月号では、学校と地域が良好な関係を築きながら長く継続されている2つの行事から、異なる立場の人たちが協働して事業をしていくためのヒントを紐解きます。

十日町小学校×十日町コミュニティ協議会
十日町地区雪まつり

 十日町コミュニティ協議会の主催で、2009年に始まった「十日町地区雪まつり」。地区の住民が集まり雪像作りや芸能カラオケ大会、打ち上げ花火大会を楽しみます。新型コロナウイルス感染症の流行前は、豚汁やおこわ、焼き芋などのふるまいもあり、会場になっている十日町小学校の体育館が埋まるほどの人が参加しました。

雪まつりで、毎年行う福まきの様子。この年は、PTA役員の保護者の方が鬼役を買って出てくださったそうです。

子どもたちの思い出づくりのために

 雪まつりは、住民同士が顔を合わせる機会が減っている中、多世代が交流しながら子どもたちが思い出をつくれるような行事をしようと始まりました。小学校の子どもたちは、カラオケ大会で学年ごとに歌を披露したり、2016年からは6年生が雪上ゲームの企画運営で、まつりに関わっています。過去には、音楽好きな先生が生徒とバンドを組んでカラオケ大会に出演したこともあったそう。子どもたちは、毎年雪まつりに参加するのを楽しみにしているそうです。

芸能カラオケ大会で歌う「ワカカッターズ」の皆さん。カラオケ大会では、地域の歌自慢や英語教室に通う子どもたちが歌を披露します。

それぞれの“得意”を持ち寄る

 雪まつりの企画運営に携わっているのは、学校とコミュニティ協議会だけではありません。当日の警備を担う消防団員や、豚汁やおこわを調理する食事ボランティア、花火を打ち上げるため場所を除雪する農家の方など様々な方が、自分たちにできることを持ち寄りながらまつりに関わっています。「日頃から小さなことでも相談し合うことで横のつながりができ、何かしたいときにみんなが助けてくれる。日常のコミュニケーションから助け合える関係性が生まれ、そしてまつりを通してその関係性が強化され、災害などの有事のときに連携できるのだと思います」と、コミュニティセンター長・竹内正巳さん。コミュニティ協議会が中心になって学校や様々な組織をつなぎ、それぞれの特性を活かしながら、行われている行事です。

2020年の雪まつりで、6年生が企画運営した的当てゲームの様子。これまでに、ラグビーやボウリングをしたこともありました。

与板中学校×よいたコミュニティ協議会
~目指せ!あの旧黒川をもう一度!~河川清掃活動

 恐竜のすべり台が目を引く「与板河川緑地たちばな公園」の脇を流れる旧黒川。「~目指せ!あの旧黒川をもう一度!~河川清掃活動」は、かつてはヘラブナ釣りや手作りボートレースで賑わった旧黒川を取り戻そうと、2010年から与板地域がコミュニティの推進準備を進める中で模擬活動としてスタート。2013年からはコミュニティ推進協議会事業となり、2022年には13回目を迎えました。当日は、与板中学校の生徒や呼びかけに賛同した地域住民や地域の企業の方など約250人が集まり、河川清掃に励みます。2015年には、信濃川水系水質汚濁対策連絡協議会より優良団体として表彰されました。

3年生10人は、地域の方と一緒にいかだに乗って川の中を清掃。いかだに乗りたい人がたくさんいるため、毎年競争になるそうです。

育まれてきた中学生と地域の関わり

 中学生が参加するようになったきっかけは、コミュニティ協議会からの声掛け。人口が少ない与板地域では、地域運動会やマラソン大会など地域の行事に昔から中学生が参加して場を盛り上げてきました。清掃活動では、中学生と地域の方が協力しながら、ごみや枝葉を拾います。新型コロナウイルス感染症流行前は、清掃後に豚汁を食べながら親睦会を開催していました。「子どもたちは地域の宝です。作業を通じて地域の方と接することで、郷土愛が芽生え、地域に誇りがもてるようになるのではないかと思います」と、よいたコミュニティセンター長・佐藤文子さんは言います。

2022年の清掃活動で拾ったごみの量は、燃えるごみと燃やさないごみを合わせてなんと100kg!「中学生は小さな枝葉も一生懸命拾ってくれます」と佐藤さん。

win-winの関係をつくる

 以前は部活動ごとに有志の生徒と先生が清掃活動に参加していたそうですが、2021年から授業の一部として参加することにしたそう。その理由を与板中学校の小林利明先生はこう話します。「授業の一部として参加することで、生徒はもちろん、先生方が代休を取れるようになり、働き方改革につながりました。また、クラス単位で参加することで、クラス替え直後の生徒たちが親睦を深める機会にもなっています。職員も与板の方々と触れ合うことができ、与板について深く理解することもできました」。一方、佐藤さんは「中学生から『もっと成長し、与板に貢献したい』、『機会があれば積極的に清掃活動に参加したい』といった声をいただいています。清掃活動の実行委員も、『中学生が来てくれてうれしい』『元気をもらった』と話しており、中学生の存在が活動の励みになっています」。どちらか一方が負担を感じてしまうことがないように工夫し、互いが協力するメリットを感じられる仕組みをつくることが大切なのかもしれません。

新型コロナウイルス感染症流行後は、感染を防ぐため、中学生と地域の方がいくつかの班に分かれて、持ち場の清掃を行っています。

 学校と地域の方が協働して事業を継続するためには、日頃からコミュニケーションを取り助け合える関係性を築くこと、互いにとって負担なく続けられる工夫をすることが大切だとわかりました。それは、学校と地域の関係だけにとどまらず、行政や企業、市民団体の関係にも当てはまることかもしれませんね。


本記事は、らこって2022年8月号でご紹介しています。