
長岡のまちづくりプレイヤーにスポットを当てるインタビューシリーズ「Nagaoka Players」。今回は、長岡造形大学大学院の博士課程に在籍しつつ、地域づくり支援員を務める、佐々木茉歩さんにお話を伺いました。
現在三島(みしま)地域での地域づくり支援員として「いのコト寺子屋」の開催、市民大学「かんもす大学」の事務局などを通し、日々三島地域の課題解決に精力的に取り組む佐々木さんは、2022年に地域おこし協力隊として長岡へ移住し対話を軸に活動を続けてきました。
かつて理系学生だった彼女が、なぜ「対話の場づくり」に情熱を注ぐようになったのか? 自身の原体験である「おばあちゃんの縁側」から、心地よい場所を細く長く街に残していくための考え方まで、じっくりとお話を伺いました。
佐々木さんのインタビューはYouTubeでもお楽しみいただけます!
記事にできなかったお話もたくさんありますので、ぜひご視聴ください。
地域づくり支援員と、大学院博士課程の2つの顔
――まず、佐々木さんの現在の活動や肩書きについて教えてください。
佐々木茉歩さん(以下、佐々木): 肩書きとしては、長岡市の「地域づくり支援員」(国の制度としては「集落支援員」)というお仕事と、長岡造形大学大学院の博士課程に在籍する「学生」という2つの顔を持っています。
――三島地域では、具体的にどのようなお仕事をされているのですか?
佐々木: 週2日ほど三島地域に通い、おばあちゃんたちが集まる「地域の茶の間」にお邪魔したり、いのコト寺子屋で子どもたちと遊んだりしています。地域の方々がどんなことを求めているのか、どんなことを考えているのか直接声を聞くのが主な仕事です。
――三島地域に関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
佐々木: 地域おこし協力隊として県外から長岡へ来た際知り合いがおらず困っていました。大学の後輩の紹介で三島地域にある「柳醸造」さんの味噌祭りや広報をお手伝いしたのが始まりです。通ううちに家族のように温かく接していただき、長岡の中でも一番思い入れの深いエリアになりました。
対話することへ興味を持ち始めた理系学生
―― 元々、対話や人の話を聴くことに特別な興味があったんですか?
佐々木: 全然ありませんでした。地元の大学の理工学部に通っていて、日々実験室にいました。当時の先生には申し訳ないですが、何のためにやっているか分からない日々でした。(笑)
―― そこからどのような転機があったのでしょうか?
佐々木: 大学2年生の時にコロナ禍になり、事態が一変しました。「自分には向いていない研究をこのまま続けていていいのだろうか」と、自分の人生を深く問い直すようになったんです。
―― そんな時期に転機となったイベントに出会ったとお聞きしました。
佐々木: SNSで友人の投稿を見かけ、廃校で5泊6日キャンプをするイベントの存在を知りました。全国から集まった若者が寝食を共にしながら人生について語り合うプログラムで、コロナ前の自分なら「意識高い系だな」と通り過ぎていたと思います。でも当時は「今ここに行かなければいけない」と直感し飛び込みました。

―― 現地での体験はいかがでしたか?
佐々木: 決まったスケジュールはなく、空間を綺麗に整えたり絵を描いたりしながら、自分の人生や思考を振り返るワークも行うような時間を過ごしました。そこで出会った方々が、私の拙い話をただじっくりと聴いてくれたんです。心が解き放たれるような感覚を味わい涙が出ました。
―― その体験が、長岡での活動へと繋がっていくのですね。
佐々木: 「自分の感情や話を聴いてもらえることが、こんなにも人を救うのか」と感動しました。人の話を聞く技術に「コーチング」というものがあると知りました。その後、夜間のオンラインスクールでコーチングを大学と並行して学び始めました。
廃校でのキャンプで出会った方に「長岡市にいのプロという制度があるよ」と教えてもらい、若者が対話できる場を作りたいと企画をプレゼンして地域おこし協力隊として長岡へやって来ました。
――協力隊時代に始められた「居なりすん」について教えてください。とてもユニークで温かいネーミングですね!
佐々木: ありがとうございます!協力隊着任1年目に「いなり寿司でも食べながら私に話しかけてもいい場所」というコンセプトで始めた取り組みです。「いなり寿司」と、英語で傾聴を意味する「Listen」を掛け合わせて『居なりすん』と名付けました。
――具体的にはどのような空間なのですか?
佐々木: カウンター3席ほどの小さなスペースで、いなり寿司をつまみながら気軽におしゃべりできる場所です。世の中には大人数で盛り上がるイベントはたくさんありますが、私は「大人数が苦手な人」や「私なんか…と思っている人」がなんとなく来れて、誰かと出会える場所を作りたかったんです。ちなみに、料理が苦手な自分を克服したいという裏の目的もありました(笑)。
いなり寿司でも食べながら私に話しかけてもいい場所「居なりすん」
――協力隊時代に始められた「居なりすん」について教えてください。とてもユニークで温かいネーミングですね!
佐々木: ありがとうございます!協力隊着任1年目に「いなり寿司でも食べながら私に話しかけてもいい場所」というコンセプトで始めた取り組みです。「いなり寿司」と、英語で傾聴を意味する「Listen」を掛け合わせて『居なりすん』と名付けました。
――具体的にはどのような空間なのですか?
佐々木: カウンター3席ほどの小さなスペースで、いなり寿司をつまみながら気軽におしゃべりできる場所です。世の中には大人数で盛り上がるイベントはたくさんありますが、私は「大人数が苦手な人」や「私なんか…と思っている人」がなんとなく来れて、誰かと出会える場所を作りたかったんです。ちなみに、料理が苦手な自分を克服したいという裏の目的もありました(笑)。

対話の原体験「おばあちゃんの縁側」
――佐々木さんが場づくりにおいて、根底で大切にされている原体験は何ですか?
佐々木: 幼少期、自宅の縁側にいつも座っていたおばあちゃんの姿です。近所の子たちが集まって遊ぶような家だったので、おばあちゃんはいつも縁側に座って見守ってくれていました。
ある日、近所に住む少しギャル風のお姉さんがふらりとやって来て、おばあちゃんの隣に座り「仕事をやめようか悩んでいて…」と真剣な人生相談を始めていたんです。そこに座っていると通りかかった人が安心して心を開ける縁側。あの光景が、私の空間づくりの理想像になっています。
――『居なりすん』でも、その「縁側」のような空気感を意識されているのでしょうか?
佐々木: カウンセリング室のように「悩みを解決しに行く場所」にするのではなく、「なんとなく来て、いなり寿司を食べてたら話せちゃった」という緩やかさを大切にしています。重い悩みを抱えた方が来た時も、居合わせた参加者同士が自然と励まし合い、相互にケアし合う温かい関係性が生まれています。
心地よい対話のエッセンスを街に残す
――後輩の方々への広がりがあるとお聞きしました。
佐々木: 「居なりすん」に遊びに来てくれた長岡造形大学の後輩たちが対話に元々興味があったり、ノウハウを受け継いで「ほっこりすん」や「こおりすん」などの姉妹イベントを企画してくれました。「ほっこりすん」は現在も長岡造形大学内で継続してくれています。

――活動を継続する上でのこだわりについて教えてください。
佐々木:「やらなきゃ」ではなく「やりたい」と思えるペースを守り、無理な時は「今月は休みます!」と自分でハンドルを握り続けることを意識しています。
――最後に、佐々木さんがこれから長岡の街で表現していきたい未来について教えてください。
佐々木: 私は「大きな成果を上げてやろう」とか「自分が作ったものを独占したい」という気持ちは全くありません。自分が去った後も、「あの居なりすんって場所、なんか良かったよね」という記憶や、誰かの話を丁寧に聴くという“対話のエッセンス”が、長岡の街のあちこちに細く長く残っていってほしいと思っています。
一人ひとりの小さな対話や関係性をコツコツと大切に重ねた先に、温かく心地よい居場所が広がっていく。これからも自分のペースを大切にしながら、この街で場を開き続けていきたいです。
佐々木茉歩さんの活動はこちら▼