「ボランティア活動が私たちにもたらすもの」
誰かを想うやさしさは、社会全体のやさしさへ

 

 今、私たちのまちが抱えている様々な課題に、それぞれの特性を活かして向き合い続けている市民活動プレイヤーをご紹介します。今月のテーマは、「ボランティア活動が私たちにもたらすもの」。誰かのために無償で行われるボランティア活動は、私たちの社会や活動者自身に何を与えてくれているのでしょうか。

 子どもの見守りや地域の美化運動など様々な活動を支えるボランティアという存在。一般的にボランティア活動とは「自発的に、他の人や社会のために無償で行う活動」を指します。後に「ボランティア元年」と呼ばれ、100万人を超えるボランティアが現地で活動した1995年の阪神・淡路大震災以降、災害支援に留まらず福祉や環境保全など様々な分野において活躍の場を広げているボランティア。一方、労働の対価がお金で支払われる社会において、その活動は「タダ働き」「無償労働」と言われてしまうことも。しかし、ボランティア活動はお金には代えられない大切なものを活動者に与えてくれます。

 

自分を好きになるきっかけ~光野 颯斗(こうの はやと)さんの場合~

 

 「もし僕がボランティア活動をしていなかったら、家にこもり就職もしていなかったかもしれません」と話す光野颯斗さんは、元々内向的な性格で、子どもと関わるボランティア活動に興味がありながらも、それは女性がするものという考えから周囲の目が気になり、行動に移せずにいました。しかし大学3年生のときに、自分と同じ男子大学生が子育ての駅「ぐんぐん」でボランティアをしていると新聞記事で知り、勇気を出して「ぐんぐん」での子どもの見守りや子ども食堂での学習ボランティアに挑戦。「親御さんから『ありがとう』と言われると、人目を気にする必要はないんだなと思ったと同時に、自分の存在が認められたような気がして自己肯定感が上がっていきました」。少しずつ性格が外向的になり、もっと色々なことに挑戦したいと保育園でのインターンシップにも参加したそう。就職し会社員として忙しく働く今も、「ぐんぐん」でのボランティア活動を続けています。

 

「ありがとう」と言われること~深滝 健太郎さんの場合~

 

 深滝健太郎さんは、ほぼ毎日5~30分ゴミ拾いを行い、それ以外のときでもゴミを見かけたら拾う生活を約9年間続けています。好きな俳優の「ゴミを拾ったり、電車でお年寄りに席を譲ったりするのが本当のかっこよさだ」という言葉に感銘を受けて始めたゴミ拾いでしたが、続けるうちにゴミが環境に与える影響に興味をもつようになり、今は将来を生きる子どもたちのために活動を続けているそう。「人間として生まれたからには、人の役に立ちたい。ゴミ拾いという身近な活動が、持続可能な社会づくりにつながればいいなと思っています」。やりがいは、ゴミ拾い中に道行く人がかけてくれる「ありがとう」の言葉。中にはわざわざ車を停めて話しかけてくれる人もいて、その一つひとつが活動を継続する糧になっています。

 

 

広がっていく人とのつながり~大橋 利生さんの場合~

 

 大橋利生さんは、中之島にあるみずほ団地で花壇の整備をしている「みずほ花華会」のメンバーです。以前は一人で花壇を整備していましたが、徐々に一人で活動することに限界を感じるようになり、声をかけてきてくれた花華会のメンバーと一緒に活動するようになりました。「きれいな団地に住みたい」という同じ想いをもったメンバーと作業することで、活動に張りが出たと言います。「仲間ができただけではなく、水やりなどで家の外に出ることで、ご近所の方と顔を合わせたり声をかけたりする機会が増えました」。花壇で作業していると、散歩している人や自転車に乗っている中学生があいさつをしてくれたり、同じように花壇をきれいにしている他の町内の人と話したり。ボランティア活動を通して、人とのつながりが広がっています。

 

 

ボランティアは暮らしの豊かさを育む

 

 このように、ボランティア活動は活動者に、自身の成長や、人の役に立っているという実感、人とのつながりなどお金では買えないものをもたらしてくれます。そしてその活動は、国や自治体などの政府や企業では担えない役割を果たし、私たちの生活をより豊かにしてくれています。 
 ボランティア活動の特徴は、機動性や多様、そして先駆性。「全体の奉仕者」として常に公平さを求められる行政は、課題に対して取り組む際、全体をくまなく把握することや住民の賛同が得られる最大公約数的なサービスを提供することが求められるため、対応が遅れるだけではなく、その対応も保守的なものになりがちです。一方、ボランティア活動は、市民の自発性によって行われ公平性を求められない分、目の前の課題に素早く柔軟に対応することができます。
 また企業は常に利益を追求するため、収益の得にくい分野で活動するのは難しいもの。その点において、利益を求めず参加者の自主性によって行われるボランティア活動は、企業では取り組みにくい社会課題の解決に寄与できます。
 私たち個人にも、社会にとっても有意義なボランティア活動。みんなが誰かを想うやさしさを少しずつ行動に移していくことで、社会に素敵な循環を生んでいきたいですね。

 

【参考文献】
「市民社会の創造とボランティアコーディネーション」
特定非営利活動法人 日本ボランティアコーディネーター協会 編
早瀬 昇・筒井 のり子 著

メンバー&参加者の声


本記事は、らこって2021年9月号でご紹介しています。