長岡市内でSDGsに取り組む方たちを訪問!
今回は「NPO法人建築・住教育研究会 -10分の1組立住宅模型を使った」さんにお話を伺いました。
貴団体の概要を教えてください。
小学生から社会人まで幅広い年齢層を対象に、建物の地震対策や省エネについて、体験しながら学べる教育方法を研究し、実践しています。キーワードは「領域横断型(さまざまな分野を組み合わせて学ぶ)」「アクティブラーニング(積極的に学ぶ)」「可視化(見てわかるようにする)」です 。
取り組んでいるSDGsの目標と、取り組みの内容を教えてください。
当団体は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成を目指しています 。
具体的な取り組みは以下の通りです。
- 社会人向け建築講座:毎年開催しており、10分の1サイズの組立住宅模型(1/10模型)を使って、家の悩みや課題を疑似体験しながら解決策を見つけます。この講座を通じて、「家は壊すものではなく、大切に住み継ぐものだ」という考え方が広まっています 。
- 子ども向け活動:
- 小学生向け:紙やストローなど身近な材料で簡単な模型を作り、地震に強い家の仕組みを楽しく学べるイベントを研究・開発し、参加しています 。
- 中学生向け:出前授業として、社会人講座と同様に1/10模型を使った体験学習を行い、耐震構造の理解を深めています 。
これらの活動を通して、子どもから大人まで「家を大切にする考え方」や「安全な住まいづくり」の大切さを伝え、地域に根ざした持続可能なまちづくりを目指しています 。
取り組みを始めたきっかけと、これまでの経緯を教えてください。
2004年の新潟県中越地震後、被災した子どもたちの不安を和らげるには、建物の安全性を理解することが不可欠だと考えたことがきっかけです。特に、座学ではなく手を動かしながら試行錯誤する体験型の学びが、子どもたちの直感的な理解につながると判断しました。
- 2008年:1/10模型を使った建築講座を開始 。
- 2009年:空間認識能力が育ち、理科や数学で建築の基礎に触れる中学生を主な対象としました 。
- 以降:長岡造形大学の後藤研究室、2014年からは新潟大学飯野研究室と共同で、年間2〜3校で建築講座を継続的に実施 。
- 2018年4月:科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(理解増進部門)を受賞し、講座の意義が認められました 。
- 2019年:NPO法人として活動を継続 。
- 2020年以降:パンデミックにより対面活動が一時制限されました 。
- 2022年:10年以上にわたる中学生向け講座の経験から、社会人にも有効な学びだと実感し、対象を社会人にも拡大しました 。
- 現在:長岡市の「雪国」という地域特性を考慮し、雪や地震に強い建築の仕組みをSDGsの「住み続けられるまちづくり」と関連づけた講座を展開し、生涯学習として発展させています 。
周囲の反応や、取り組んでいてよかったことまたは大変だったことを教えてください。
1/10模型と補助教材を使うことで、専門的な内容でも受講者が実際に手を動かしながら直感的に理解している様子が見られ、繰り返し体験することで理解が深まり定着する効果も確認できました 。
受講者からは「基本的な考え方が少し分かったので、これから自分で調べてみたい」「断熱性能などについて、少しずつ理解を深めたい」といった、自主的な学びへの意欲が見られます。
一方で、受講者数の増加に伴い、個別指導の質を保ちながら効率的に講座を運営することが課題です。社会人向けには、より詳しいデータや専門知識、リフォーム希望者には施工事例や最新技術の紹介を充実させる必要があります。子ども向けには毎年新しい教材を開発しており、子どもたちが夢中で模型を組み立てる姿や声は、今後の教材開発の大きなヒントになっています 。
貴団体の取り組みを通して、2030年にどのような社会をつくりたいですか。
当団体は、2030年までに「誰もが建築の仕組みを理解し、自らの暮らしを主体的に考えられる社会」の実現を目指しています。建築は専門家だけでなく、すべての人の生活に関わるため、子どもから大人まで、年齢や職業に関係なく建築の基本的な考え方、安全性、環境性能を学ぶ機会を広げることが重要だと考えています。
体験型講座を通じて、1/10模型での学習や振動実験による直感的な理解が、学びの定着や自主的な探求心につながることを実感しています。このような学びの場を提供し続けることで、地域の自然条件に適した安全な住まいづくりへの理解が深まり、災害に強いまちづくりにも貢献できると考えています。最終的には、SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」に貢献し、地域の特性を活かした持続可能な社会の実現を目指します。
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