長岡市内でSDGsに取り組む団体にスポットを当てる「長岡みんなのSDGs」。
今回は、子どもを真ん中にした体験と対話の防災学習を通して、学校・地域・家庭・企業を緩やかにつなぎ、災害に強いまちづくりを進める「NPO法人ふるさと未来創造堂」の皆さんにお話を伺いました。
総務大臣賞や内閣総理大臣表彰を受賞するなど全国的にも高い評価を受け、長岡の防災教育を牽引する同団体の歩みと、目指す「共育社会」の未来をご紹介します。
教えるのではなく「共に育む」。防災を日常の“学び合い”へ
ふるさと未来創造堂は、2015年3月に設立されたNPO法人です。「自然災害から人の命が守られる社会」を理念に掲げ、防災をきっかけとした人づくり・地域づくり・まちづくりに取り組んでいます。
長岡は過去に中越地震や7.13水害など、数々の大きな自然災害を経験してきました。全国的にも災害が多発する現代において、事務局長の中野雅嗣(なかの まさつぐ)さんは、「かつては年に一度の避難訓練くらいしか経験する機会がなかった。子どもだけでなく大人も含めて、日常からみんなで学び合う機会をつくっていく必要がある」と語ります。
しかし、かつてに比べて地域や家庭、学校のつながりは希薄化しつつあります。さらに学校現場は教員の異動などによって防災教育のノウハウが途切れてしまうという課題もありました。
そこで同団体が大切にしたのが、一方的に知識を教え込む「教育」ではなく、子どもを真ん中にみんなで学び合う「防災“共”育」という考え方です。子どもたちの「やってみたい」「知りたい」というわくわく感を軸に、体験や対話を重視した学びを地域全体で支える仕組みづくりが始まりました。
「押し売り」ではなく「御用聞き」――地域と学校を結び直す持続可能な仕組み
同団体の活動を支えているのが、学校や地域の現状に寄り添う姿勢です。設立当初は「完成したプログラムをやってください」と売り込むのではなく、まず学校現場の悩みやニーズを聞き取る「泥臭い信頼関係づくり」からスタートしました。
この伴走型の姿勢から生まれた代表的な取り組みが、長岡市内の全小・中学校への年1回の「御用聞き」訪問と、防災教材「防災玉手箱」の活用支援です。
- 学校と地域をつなぐサポーターの存在
約60名以上の「防災共育サポーター」が学校を直接訪ね、先生方の相談に対応。異動の際も引き継ぎがスムーズに行われ、約8割の学校で継続的な防災学習が実施されています。 - 体験と対話を重視したプログラム
避難所運営ゲーム(HUG)や備蓄品の組み立て体験、地域の語り部による震災体験談など、子どもたちが主体的に考え、話し合う授業を提供しています。 - 学びの成果を発信する「こども防災未来会議®」
子どもたちが学んだ成果を「防災かべ新聞」やWeb上の「にいがた防災ずかん」などで発表し合い、子ども同士や地域社会へ学びを還元する場を毎年開催しています。
さらに近年では、フリースクールに通う子どもたちや在住外国人、障害のある方々など、これまで防災を学ぶ機会が少なかった人々へもアプローチを拡大。「誰一人取り残さない防災教育」の実践を進めています。
多様な主体とのパートナーシップで挑むSDGs
ふるさと未来創造堂が実践する「防災“共”育」は、持続可能な地域社会をつくるための包括的な取り組みであり、SDGsの複数の目標と深く連動しています。
目標4:質の高い教育をみんなに
- 体験と対話を軸とした質の高い防災教育を県内外の学校へ提供。
- フリースクールや多様な背景を持つ子どもたちにも学びの場を届け、包摂的な教育環境を実現しています。
目標11:住み続けられるまちづくりを
- 「御用聞き」の仕組みや地域の避難所運営研修などを通じて、日常から「顔の見える関係性」を構築。
- 災害時にお互いを助け合える、しなやかで強い地域社会をつくっています。
目標13:気候変動に具体的な対策を
- 豪雨・水害の頻発化に対応するため、「わが家の防災タイムライン」の作成・普及を支援し、個人の防災行動力を高めています。
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
- 「○○×防災」をテーマに、地域住民、行政、他団体、企業との協働を展開。
- 長岡市の老舗パン工場と連携した「新潟仕送り部(仕送り×防災)」など、多様な人が関われるきっかけ(関わりしろ)を広げています。
2030年に向けて:特別な日の訓練から、「イツモの防災」へ
ふるさと未来創造堂が目指す2030年の姿は、「自然災害から全ての人の命が守られる社会」です。
その実現のために同団体が描くのは、防災を特別な日の訓練として終わらせるのではなく、日々の暮らしや学びの中に自然に溶け込んだ「イツモ(日常)の防災」にしていくことです。
「教える人・教わる人という一方向の関係ではなく、大人も子どもも共に学び合い、支え合っていくことが大切です。子どもを真ん中に、学校・地域・家庭・企業が顔の見える関係でつながる『共育社会』を長岡から全国へ広げていきたい」と中野事務局長は未来を見据えます。
子どもたちの「助けたい」「力になりたい」という思いを育み、地域全体でその成長を見守る――。ふるさと未来創造堂の温かく持続可能な挑戦は続きます。

【団体情報】
- 団体名:NPO法人ふるさと未来創造堂
- 設立:2015年3月12日
- メンバー数:正会員15名、賛助会員9名、防災共育サポーター60名以上
- 主な事業:学校防災教育支援(授業相談・出前講座・教員研修)、地域・家庭向け防災講座・訓練支援、防災玉手箱・御用聞き窓口の運営、「こども防災未来会議®」の開催など
- 公式HP:https://www.furusato-mirai.org/




